探偵になりたい人のための「私の探偵デビュー戦の思い出」

私が探偵デビューした時の調査現場を紹介します

こんにちは。管理人のエスポワールです。今回は私が初めて探偵として調査に臨んだ記念すべき浮気調査の現場がどのようなものであったかを紹介します。

まず、最初に今回の記事で最も伝えたいことは

「私は準備不足の状態で安易に探偵事務所に調査を依頼することには否定的な立場ですが、それでも、依頼者自身が一人で探偵のように尾行や張り込みをすることはリスクが大きい。自分を含めた多くの新人探偵が失敗する事例を見てきたから」

というものです。 顔バレのリスク以上に張り込みには想像以上に集中力が必要で、その負担に耐えられないのです。

そして、私にとっても初めての調査現場は探偵として大事なことを自分が分かっているつもりで分かっていなかった事を反省した思い出深い現場でもありました。

大事な事でも、「それを単に分かっていること」と「実際に痛い目に遭ってその重要さを納得していること」では雲泥の差があるのです。

浮気調査がどのように行われているかという意味では物足りない内容かもしれませんが、「素人が浮気調査をしようとすると残念な結果になることが多い」ということの事例としては悪くないと思います。

浮気調査開始前の事前情報と調査進捗状況

まず、私の初めての浮気調査はキャリア7年のT先輩と千葉県のG現場でした。T先輩は既にG現場に数回入っており、ターゲット(男性)の容姿やカバンなどの持ち物の特徴も頭の中に入っていました。

また、事前の情報によれば、夕方の勤務先から調査を開始したその日はターゲットが浮気相手と接触する可能性が高く、依頼者より日時指定の調査の依頼を受けたのでした。尚、G現場は既にT先輩が1週間前に同じ勤務先の浮気相手との不貞の現場の撮影に成功していました。つまり、不貞の現場の2度目の証拠を撮影しようというのがこの日の現場の目的でした。

ターゲットの勤務先は千葉県の本八幡でした。私は初めての浮気調査ということで、非常に興奮しながら現場へ向かいました。ターゲットの勤務先は駅前の7階建てのビルで、出入口はa,b,cの3か所ありました。そして、T先輩の事前の情報から、退勤の際に利用する出口はaであることが分かっていました。

調査開始、張り込みが始まる

調査が始まり、張り込みを開始します。私は大本命のa出口を斜め向かいの歩道から監視しました。T先輩は建物からの距離はやや遠めで、私の30m程後方からa,b,cの三か所見える場所から監視していました。

通常、調査の現場においては建物の出入り口の数以上の調査員を準備するのがセオリーなのですが、私の所属していた探偵事務所の場合、慢性的に調査員の数が足りていませんでした。もちろん、依頼者には3名で調査していると嘘をついています。

調査開始1時間後。ターゲットは出てきません。後ろを振り返るとT先輩がいました。どうやらT先輩もターゲットの退勤する姿をキャッチしていないようです。

調査開始2時間後。ターゲットはまだ出てきません。後ろを振り返るとT先輩はまだいます。

調査開始2時間10分後。後ろを振り返るとT先輩がいません。その時、電話が鳴りました。T先輩からでした。

ターゲットを見落としてT先輩との合流を試みるも、追いついた時には調査が終わっていた

T先輩からの電話での口調は落ち着いていました。

「もしかしてまだ勤務先で立ってる?ターゲットもう出てきたから本八幡の駅まで来て」

ターゲットがいない以上、私が勤務先で張り込んでも無意味なので、急いで駅に向かうも追いつけません。結局、ターゲットとT先輩が乗車した電車には乗れませんでした。次の電車が来るのを待ち、津田沼方面の電車に乗車します。乗車中、稲毛駅で降車したとT先輩から連絡が入ります。稲毛駅というとターゲットの居住先の最寄り駅でした。

私は稲毛駅で降車し、改札を出ました。稲毛駅は北口と南口があるのですが、ターゲットとT先輩はどちら側に出たのでしょうか。連絡しようと電話を持った時、後ろからT先輩の声がしました。

「ターゲットが居住先方面のバスに乗ったから、今日の調査はもう終了していいから」

調査が終了しました。

失意のまま終えた探偵デビュー戦

私の探偵デビュー戦は3時間で終わりました。ターゲットは浮気相手と接触せずに直帰しました。ターゲットを勤務終了後、帰宅まで見失うことなく追いきれたという意味では調査は成功です。しかし、その成功はT先輩一人の力によるもので、私は何もしていません。

帰り道に「結局ターゲットはb,cのどの出口から出たのですか?」とT先輩に聞きました。 すると、T先輩は涼しげな顔をしながら答えました。

「普通にaから出たよ。それと、張り込み中にあまりキョロキョロ振り返らなくていいから、出入口の監視に集中して」

自分の監視の見落としが判明して、ショックと徒労感に襲われました。

以上が私の探偵デビュー戦です。T先輩の足手纏いにすらなっていなくて滑稽なのだけれど、この現場を機に自分の意識の中で探偵という仕事をなめていたことに気づきました。「探偵の仕事は言うほど難しくない。自分に限っては絶対に失敗しない」と思っていた事を反省しました。

初心者にはあまり易しくない探偵という仕事

尚、このようなみっともない失敗は決して私だけではないということを補足しておきたいと思います。

後に私も探偵デビューする新人と現場に入ったことがありましたが、張り込みも尾行もほぼ全部自分一人でやりました。本来、探偵をやったことがない人間だけで張り込みや尾行をやってはいけないのです。

そして、これは探偵の仕事の少し特殊な性質なのですが、探偵初心者だからといって、その人の能力に応じて易しい現場が用意されている訳ではないのです。

格闘技に例えるならば、初心者が軽量級からだんだん経験を積みながら重量級にレベルアップするようなものではないのです。つまり、初心者でも探偵の世界に入ったその日から無差別級で戦っていかなければならないのです。といっても、私の最初の現場は運よく軽量級の現場でしたが、それでも失敗したというだけです。

私は探偵としておよそ1000現場を経験しています。そして、その中でも初めて入ったこの現場は忘れられません。

最後になりますが、この日だけの調査費用を単純に換算すると、およそ12万円です。

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