メグレ警部の部下、デュフール刑事が張り込みに失敗したー怪盗レトン:ジョルジュ・シムノンー

1929年にメグレ警部が登場する

こんにちは。管理人のエスポワールです。今回、ベルギー人作家ジョルジュ・シムノンの初期の作品、「怪盗レトン」を紹介します。

本作品は1929年に発表された「メグレシリーズ」の最初の作品でもあります。1929年はアメリカではエラリー・クイーンがデビューした年でもあります。

また、主人公のメグレに関してはシリーズが進行していくに従って警部→警視→警視長と出世するのですが、ここでは本作品での肩書である「警部」と表記しました。また、メグレシリーズは100作品以上発表されていますが、「警視」の肩書が最も多くの作品で見られるようです。

作者のジョルジュ・シムノンは転居と旅行を好む

作者のジョルジュ・シムノンは幼少のころから転居が多く、さらには職業作家として落ち着いてからもヨーロッパや北米を中心に旅行をしています。本作品も船旅の最中に執筆された作品であり、作中にも長距離の移動、距離の大きな場面の切り替えが見られます。

また、訳者のあとがきによれば、旅行好きのシムノンが来日するという噂が持ち上がった時期があったそうです。そんなシムノンの為に江戸川乱歩が自宅の敷地に洋館の別棟を建築していたというのは興味深い話です。

結局、シムノンの来日は実現しなかったのですが、訳者によれば、もし来日していたら日本でのシムノンの評価も今とは違っていただろうと考察しています。

本作品は淡々と続く状況の描写の連続

本作品は外国の古典というジャンルなので、ある程度の読みにくさを覚悟して読み進めました。

文章そのものは簡易的な表現が多くて頭には入ってくるのですが、状況の描写が整理できないまま話が進むような感じが常にありました。その大きな理由は、物語の本筋の描写が淡白で、本筋ではない箇所での状況の描写が異常に詳しいという点にあるように思います。

例えば、自分の意識が物語に入っていけない、物語を常に聞かされているような状態で作品が進行していく一方で、物語の本筋ではないメグレ警部の負傷した肋骨の傷の痛みや酩酊状態の人物の様子が異常に詳しく描写されているのです。  

つまり、抽象的な表現になるのですが、作品のリズムと自分の頭の中のイメージがシンクロしない感覚なのです。

部下のデュフール刑事が張り込みに失敗した

以下、作中で最も印象に残った箇所を引用します。

尾行と張り込みを得意とする、メグレの部下のデュフール刑事が張り込みに失敗したことを報告する場面です。

「(中略)。女は『セレクト』をでて、すぐさま52番地の建物へはいっていきました。裁縫店です。私は1時間ばかり外で待ってから門番に聞いてみました。ところが、2階のサロンでは、だれも見かけたものがいないんです。女はあっさり建物を通りぬけちまったらしいんですね。ベリー街にも出口があったんです……」

これは完全にデュフール刑事の凡ミスです。

このような状況は、実際の調査の現場では「出入口多数による調査対象者の見落とし」というミスになります。デュフール刑事の凡ミスの本質は、「見落とし」が凡ミスではなく、事前に出口の数を把握していなかったことです。

これは探偵としてもレベルの低いミスだなというイメージを同僚に持たれてしまう残念な失敗です。

メグレ警部のデュフール刑事に対する優しいフォロー

そんなミスを申告したデュフール刑事に対して、メグレ警部はこのように言います。

「休むんだな」

このように、メグレ警部はデュフール刑事に対してミスを責めません。

メグレ警部本人が肋骨を負傷しているにもかかわらず、部下には疲れているから休めと言っているのです。これが言えるのは、いくら凡ミスであっても、誰でも犯してしまうということを知っているからです。

また、経験上、疲労によるミスは連続します。一回休んでリフレッシュすることは非常に良いと思います。

ちなみに、メグレ警部の方は怪盗レトンがチェックインしたホテルに入館してすぐに館内の出入り口の数を確認しています。

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