名探偵ポアロの欠点が露呈したーオリエント急行殺人事件:アガサ・クリスティーー

「犯人が登場人物ほぼ全員」それがオリエント急行殺人事件

こんにちは。管理人のエスポワール です。今回はアガサ・クリスティーのオリエント急行殺人事件を紹介します。

誰もが一度くらいはその作品名を聞いたことがあるであろう本作品ですが、この作品において覚えておくべきことは一つだけです。その一つがまさしくこの作品の肝、ネタバレになるのですが、「犯人が登場人物ほぼ全員」ということです。

「犯人が登場人物ほぼ全員」が推理小説としてアリかナシかはぜひ本作品を読んでみてください。映画化、ドラマ化した作品を観てみるのもよいと思います。最近では舞台化もされました。

殺人事件が起きた国際寝台列車が豪雪により立ち往生し、密室が完成する

それではこの作品のあらすじを紹介します。

シリアでの仕事を終えたポアロはヨーロッパを横断するオリエント急行に乗車しイギリスへ向かっていた。車両はポアロの他、医師・宣教師・大佐・メイド・外交官・私立探偵などの乗客が乗り合わせ、季節外れの満室であった。車内にてアメリカ人の大富豪であるラチェットは「脅迫状を受けているから自分の護衛をしてほしい」とポアロに依頼するものの、ポアロはラチェットのただ物ではない様子からその依頼を断る。バルカン半島を走行する頃、車両は豪雪により立ち往生してしまう。そして、翌朝に12か所の刺し傷を受けて死亡したラチェットが発見される。ポアロは寝台車の重役のブックと乗合せた医師のコンスタンチンと共に乗客の事情聴取を行うも、乗客たちのアリバイは互いに補完されており、容疑者探しは難航した。

豪雪により寝台列車が立ち往生するという状況が、推理小説でいう「密室殺人」の要件を満たします。

探偵は態度の矛盾を放っておけない。けれど、それを相手に勘づかれてはいけない

以下に本作品で最も印象に残った箇所を紹介します。

ポアロの質問に対して曖昧な発言をするメアリー・デベナムにポワロが鋭く突っ込むのですが、その際にデベナムが「あなたは何でもないことに大騒ぎしすぎる」と反発した時のポアロのセリフです。

「多分、それは私たち探偵の欠点でしょう。私たちは人間が常に一貫した態度をとってくれることを期待するのです。態度の矛盾を放っておけないのです。」

このように、ポアロはデベナムに対して謝罪していますが、作品中のポアロの質問は読者の視点からすると直球過ぎる気がします。つまり、物事の核心を突く質問により相手を警戒させてしまっているのです。

ですから、ここでは態度の矛盾を放っておけないのが探偵の欠点ではなく、それを相手に気付かれてしまったポアロの欠点がどうしても気になるのです。

もちろん、実際の探偵の仕事でも特に内偵調査は非常に難易度が高いです。1つの知りたい事を引き出すために、10の毒にも薬にもならない質問をして核心までの外堀と内堀を埋めていくのです。

国際寝台列車の中でお勧めはマレー半島縦断鉄道

最後に、本作品の舞台になっている国際寝台列車に関して触れたいと思います。

私も今まで国境をまたぐ寝台列車には何度か乗車したことがあるのですが、特に思い出深い路線はシンガポール-バンコク間のマレー半島縦断鉄道です。電車で移動しますが、国境の駅では出国審査や入国審査で乗客乗員全て降車して手続きを済ませます。比較的アクセスが容易で電車に乗りながら時間や国や言語や通貨が変わっていく体験ができるのは世界中でマレー半島縦断鉄道だけです。

一方、ヨーロッパの国際寝台列車はEU圏内ということでパスポートのチェックなどなく気づいたら国が変わっています。少しあっけないのですが手続きはスムーズです。

尚、本作品で登場するオリエント急行ですが、現在では作品発表当時よりも大幅に運行ルートが縮小し、ストラスブール-ウィーン間のみの運行となっています。

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