目は口程に物を言わない-恐ろしき四月馬鹿(エイプリルフール):横溝正史-

横溝正史19歳のデビュー作

こんにちは。管理人のエスポワールです。今回は金田一耕助シリーズの作者として有名な1921年発表の横溝正史のデビュー作、「恐ろしき四月馬鹿(読み:おそろしきエイプリルフール)」を紹介します。

作者は雑誌の懸賞に入選後、薬剤師として薬局に勤務し、その後、雑誌の編集者として仕事をします。そして、肺結核による病気療養生活後に戦争が始まり、本格的に推理小説作家として活動したのは戦後からでした。そして、金田一耕助シリーズが書かれたのが1946年。デビューから25年経過した頃です。尚、薬剤師としての経歴を持つ点はアガサ・クリスティーと共通しています。

エイプリルフールに周囲を欺こうと画策したが、逆ドッキリに遭うという話

それでは作品をみていきます。

作品は4月1日にM中学校の寄宿舎で生徒の小崎の失踪事件が起きたことから始まりまる。小崎の部屋は血に染まった白いシーツや散乱した室内の様子から、争った形跡が認められるものの、両隣の学生は大きな物音はしなかったと証言する。事件当時、寄宿舎で寝ていた学生の葉山は同室者の栗岡の不審な行動を目撃し、容疑者として進言するも、肝心の栗岡は黙秘に徹する。

その後、小崎の死体が校舎裏の古井戸発見されるが、栗岡は冷静だった。これらはすべて栗岡と小崎がエイプリルフールの日に仕込んだいたずらだったから。しかし、栗岡は小崎と事前に申し合わせたネタばらしのタイミングが来ない事に気付く。そして、栗岡は本当に小崎が殺されたのではないかと推測し、急に狼狽して気を失ってしまう。

意識を取り戻した栗岡は、周りの友人の中に殺されていたと思っていた小崎がいることに驚き、小崎は笑顔で応じる。エイプリルフールによるいたずらであることに事件当初から感づいていた同級生の速水が小崎と画策し、今度は栗岡に対して逆ドッキリを仕掛けたのだった。

1921年(大正10年)当時、既にエイプリルフールが日本社会に定着していたことが本作品から分かります。そして、読者に犯人や謎解きを意識させるような展開や構成はなくライトな作品です。

相手の目を見ただけで嘘が分かると勘違いしてしまう愚

ところで、「嘘をついている人は目をそらす」とか「嘘をついている人はまばたきが多い」というようなことを一度くらいは聞いたことがあると思います。しかし、目の様子だけで相手の嘘を疑うことはやめるべきです。

人は自然な状態で会話をする時、相手の目を見ている時間は30-60%と言われています。つまり、嘘をついていない状態でも相手の目を見ている時間にはばらつきがあるのです。ですから、「この人は嘘をついているかもしれない」と疑いながら相手の目を凝視すればするほど相手の目を合わせていない時間が気になってしまうのです。

まばたきの回数も同様です。自然な状態であれば、大人は1分間に15-20回のまばたきをしています。つまり、嘘をついていない状態でも大人は3-4秒に1回まばたきをしているのです。一般的には緊張状態が続くとまばたきが多くなるそうですが、相手の視線と同様に、「この人は嘘をついているかもしれない」と疑いながら相手のまばたきの回数を数えようとすると通常の3-4秒おきのまばたきの回数が多いと感じてしまうのです。

目は口程に物を言いません。絶対に目の動きやしぐさで相手の嘘を疑うべきではありません。

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