えちぜん鉄道搭乗記と「えちてつ物語」

えちぜん鉄道の線路の果てにある哀愁

写真はえちぜん鉄道三国芦原線の線路の終着点です。福井県の観光名所である東尋坊からの帰り、えちぜん鉄道三国港駅へ向かう途中で撮影しました。

写真から分かる通り、立入禁止のロープが張られているものの、線路への侵入を防ぐという意味では簡易的な感じがします。線路の終着点らしい少し寂しい写真です。

こちらは三国港駅です。三国港駅は2010年に改修されましたが、現在の駅舎は三国港駅ができた大正時代の頃の建物を復元させデザインのようです。

駅舎の中に1冊のノートがあります。中身はいわゆる雑記帳ですが、ノートには地元の利用者よりも観光客の書き込みが目立ちます。ノートに手書きで記された個人の意見や感想は書いた人の年齢や人柄が想像できるので読んでいて退屈しません。

ただ。駅舎の中にはノートがあるけれど切符の券売機はありませんでした。

えちぜん鉄道の客室乗務員

電車がホームに入線します。

「切符は車内で販売するので、発車までしばらく車内でお待ちください」

女性に声をかけられました。えちぜん鉄道の客室乗務員さんでした。えちぜん鉄道には全国的にも珍しい、客室乗務員さんがいます。客室乗務員さんの仕事は切符の販売や、乗客の乗降補助を担当します。

客室乗務員さんから切符を購入します。始発駅である三国港駅から乗客5名を乗せて電車が出発します。

駅のアナウンスを終えると客室乗務員さんは何となく手持無沙汰な様子でしたが、あまりじろじろ見るのは失礼な気がして終点の福井駅まで車窓の眺めを見ながら時間を過ごします。稲刈りを終えた田んぼだらけの福井らしい景色でした。終点の福井駅までおよそ1時間の乗車でした。

2つの居場所探しの映画、「えちてつ物語」を観に行く

そんなえちぜん鉄道の客室乗務員さんを題材にした映画が「えちてつ物語」です。

本作品は地元の福井県に東京から戻ってきた元お笑い芸人の新人客室乗務員の奮闘物語です。劇中に登場する福井の観光名所や鉄道運営の裏側が随所に見られるところが興味深く、さらに、主人公の実家の蕎麦屋の蕎麦が美味しそうに描かれている映画です。

映画のパンフレットに「笑顔を涙を乗せて、人生が再び走り出す-」とあります。故郷に帰ってきた主人公が東京でお笑い芸人として結果を残せなかった悔しさと家族と確執のあった過去を見つめ直すシーンが泣きどころです。

実際に住む家という意味での「居場所」と仕事を通じて自分の存在意義や社会的な役割を見つけていく「居場所」の二つの居場所を探していく難しさが本作品では描かれています。

そして、主演の横澤夏子さんは本業はお笑い芸人さんらしく、芸人仕込みの表情の豊かさで見ていて飽きませんでした。また、登場人物の主人公との人間関係や役割も分かりやすく、今風に言うところの「キャラが立っていた」ように感じました。

この映画は実際のえちぜん鉄道の客室乗務員さんによる著書、『ローカル線ガールズ:島田郁美』を原案に制作されています。

本書は、具体的な客室乗務員の仕事内容や、乗客の安全やサービスに対して十分すぎる配慮が生まれた経緯、現場でのエピソードが充実しています。そして、地方経済の衰退、ローカル路線の直面している問題点を実際に現場で働いている視点でドライに分析しています。

そして、福井に実際に行ってえちぜん鉄道に乗ってみたくなる本です。

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