宇佐神宮訪問記ー八幡神社の総本山がなぜ宇佐にあるのかー

全国に40000社ある八幡神社の総本山が大分にある

こちらは全国におよそ40000社ほどある八幡神社の総本山、大分県の宇佐神宮です。八幡の読み方は「やわた」あるいは「はちまん」と読みます。

全国に八幡神社があることは知っていましたが、40000社という数字に改めて驚きます。その数は全国のラーメン店の数(30000店舗）よりも多いのです。

そんな格式高い宇佐神宮がなぜ大分県の国東半島にあるのかを現場を紹介する前にまとめたいと思います。

朝廷の影響力が及ぶフロンティア、それが宇佐の地

そもそも「宇佐」の地名は九州で最初に大和朝廷の配下に入った豪族の名前に由来しています。

571年、八幡神(応神天皇のご心霊)が宇佐の御許山（おもとやま）に現れました。しかし、ここではまだ宇佐地方の氏神という存在で、地方の神社の一つにすぎませんでした。

701年、大宝律令が制定されます。この頃、朝廷は律令国家の建設を目指すものの、隼人と呼ばれる南九州の人々が反発していました。

つまり、当時の朝廷の影響力は日本全国に及んでいた訳ではなく、大分県の宇佐の地は大和朝廷の影響が及ぶ九州地方のフロンティアでした。

隼人の反乱と宇佐神宮の神仏習合

720年、隼人の反乱が起きます。朝廷軍が八幡神の御神体を戦勝祈願を目的として戦場へ持込み、反乱軍を制圧します。普段は神社の神殿に鎮座する神様を移動させる「神輿を担ぐ」行為がこの時に始まります。

隼人の乱の後、多くの人を反乱で殺してしまったことを悔いたことから、八幡神社で殺生を戒める放生会(ほうじょうえ)が始まります。放生会はもともと仏教の戒律に由来します。これが日本の神仏習合のルーツになります。その後、725年に現在の地に宇佐神宮が造立します。

つまり、殺生を戒めたり、死者を供養するような仏教の文化を神社で始めたさきがけが宇佐神宮ということになります。

東大寺建設と宇佐神宮

また、その頃国内で伝染病が流行するのですが、この様な状況を憂慮した聖武天皇が厚く信仰していた仏教に救いを求めます。そして、東大寺の建設プロジェクトが始まります。

745年、宇佐神宮は「天の神と地の神を率いて東大寺の建設に協力します」と宣言し、神社の立場から東大寺の建設に協力します。

752年、東大寺の大仏が完成します。この時、宇佐神宮からの使者が神輿を担いで東大寺へ入場しました。

この頃より、宇佐神宮はより一層の天皇家からの信頼獲得と中央集権との結びつきが強化していきました。

道教と宇佐八幡宮信託事件

769年、宇佐八幡宮神託事件が起こります。この事件は上皇側近の僧侶である道教が宇佐神宮のお告げにより「次の天皇は自分だ」と宣言して巻き起こる皇位継承事件です。しかし、貴族の和気清麻呂が勅使として再び宇佐神宮を参拝し、今度は「道鏡を排除せよ」とのお告げを受け、道教が天皇になることはありませんでした。

長い日本の歴史の中では、国民が主権を持つ以前に天皇よりも貴族が権力を持ったり、暴力的な力を背景に武士が権力を持つことがありました。また、失敗しましたが、平将門が「新皇」と名乗り、朝廷から独立しようとしたこともありました。しかし、皇族以外の人物が「次の天皇は自分だ！」と働きかけたのはこの時の道教だけです。

その後、皇位継承に失敗した道教は下野の薬師寺に左遷され、そのままこの地で亡くなっています。