安楽椅子探偵・ホームズは最初に女性の「袖口」に注目するー花婿の正体:コナン・ドイルー

安楽椅子探偵とは何か

こんにちは。管理人のエスポワールです。今回は「花婿の正体:コナン・ドイル」を紹介します。もちろん主人公はホームズですが、本作品ではホームズは自分の部屋から一歩も外に出ていません。このような探偵を専門用語で「安楽椅子探偵」と言います。

続いて「安楽椅子探偵」について詳しく説明します。まず、「安楽椅子」と言っても、主人公の探偵が本当にソファーに座りながら事件を解決するような厳密な意味での「動きがないこと」を意味しているわけではありません。つまり、探偵が犯人を尾行したり、事件の現場に行く事が無く、作品が室内にいたまま完結していればよいのです。

また、「室内にいる」という点に関しても、本作品のように事件の依頼人がホームズ宅に訪問してくるのですが、そこでの本人への聞き取り調査、及び電話での聞き込み調査、新聞などで資料収集することも問題ありません。そして、最後は犯人までもがホームズ宅に訪問してくるのですが、このように事件の対象人物が部屋に来てくれれば「安楽椅子探偵」の条件をクリアしているということになるのです。

尚、最近では「謎解きはディナーの後で」シリーズが安楽椅子探偵の推理小説として有名らしいですが、私はまだ読んだことがありません。

依頼人の継父と婚約者は同一人物でした

それでは作品のあらすじを紹介します。

ホームズはワトソンに「最近の調査はあいにく面白みが欠けている」と不満を漏らしているところに、依頼人メアリーサザーランドが訪問してくる。彼女は結婚式当日に失踪した婚約者のホズマーエンジェルを探して欲しいとホームズに依頼する。ホームズはメアリーから話を全て聞くと、もうホズマーエンジェルは居なくなったと思って忘れるように忠告してメアリーを帰宅させた。翌日、メアリーの継父であるウィンディバンクを呼び出すと、ホームズは彼が変装してホズマーエンジェルを演じていたことを見抜き、厳しく追及する。ウィンディバンクの動機はメアリーが他の男性と結婚することを危惧したことで、メアリーの潤沢な資産が将来的には自分のものではなくなることを心配した為であった。

実は本作品は複数の登場人物が実は同一人物でしたというオチなのですが、このようなオチの先駆けが本作品かもしれません。

本当の探偵は女性の「袖口」に注目しない、注目するのは靴

次に本作品において印象に残った箇所を引用します。ホームズがワトソンに対して依頼人のメアリーの外見のどの部分を最初に見てどのように観察していたかを説明する場面です。

(中略)言っておきたいのは、全体の印象にとらわれず、細部にこそ注意をすべきだということ。ぼくは女性を見るとき、まず袖口に注目する。男なら、ズボンの膝のほうがいいかもしれない。君も気づいたように、依頼人は袖口にビロードの布を張っていたが、これはどんな材質より、いちばん跡がつきやすい。手首のすぐ上の、タイピストが腕をデスクにもたせかける箇所には、二本の筋がくっきり残っていた。

このように、ホームズは最初に女性の袖口に注目してその職業を推測しています。ただ、実際の探偵の感覚からすると「実際にはそこまで袖口は見ないな」という感じです。袖口を注目して分かることはさほど多くないのですが、「時計が高価だな」とか、「長袖シャツで隠れているけれど、一瞬刺青が見えたな」くらいだと思います。そして、探偵として最初に注目するのはむしろ足首・靴の方です。

靴を見ることで外出目的が分かる時があるからです。例えば、「サンダルで出てきたから近所に買い物に行くだけだろうな」とか、「仕事に行く時の靴とは違うから何か普段と違う行動を起こしそうだな」などと推測するのです。

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