宇都宮病院訪問記ー宇都宮病院事件の現場へ行くー

精神病院から広告契約を取った時の思い出

こんにちは。管理人のエスポワールです。今回は宇都宮市の精神病院の宇都宮病院を訪問した旅行記になりますが、最初に私が広告代理店で働いていた頃の精神病院との思い出を最初に紹介します。

以前、私が広告代理店に勤務していた頃、とある精神病院から広告の契約をいただきました。この契約をきっかけに、広告掲出に至るまでの打合せなど、その病院へ一時期よく通いました。私の営業していた広告媒体は駅の看板がメインでしたが、病院は割と契約を取りやすい業種でした。窓口となった総務部の部長さんは打合せの際、いつも同じ時間を指定してきました。そして、初回の訪問から私はある違和感に気づいていました。

その違和感とは「患者らしき方と全く会わない」というものでした。

もちろん、窓口で打ち合わせの旨を伝えてそのまま病院内の応接室に通されるだけなので、その点は仕事上は全く問題ありません。また、病院側があえて私のような部外者と患者が接触しない様、気遣いをしてくれたという見方もできます。

しかし、それなりに大きい病院の常識的な時間帯ということを考えると、全く患者と会わない事はかなり不自然でした。病院側の気遣い以上に、精神病院の解離性、閉鎖性のようなものを感じました。

宇都宮病院事件とは何か

宇都宮病院事件とは精神病院の職員が患者を殴打し、死亡させた事件です。1983年の4月と12月に2回発生したのですが、当時は事件が隠ぺいされました。

しかし、不法収容されていた患者が東大病院を訪れて宇都宮病院を告発する意思を伝え、東大病院が宇都宮病院の現状を朝日新聞らと調査し、翌年の3月14日に朝日新聞が報道したことで事件が明るみになりました。

結局、1981年から3年間で220人が死亡していたことが判明しました。この病院では患者に対して日常的に虐待が行われていた事が容易に想像つくのですが、恐らく職員に虐待の意識は希薄だったと思われます。「指示に従わない、或いは反抗してくる患者に対しては身体の拘束、軽度の暴力もやむなし」の教育、指導を受けていた為です。そして院長自身もゴルフのアイアンを片手に院内を巡回して診察し、時に患者を威圧、暴行を加えていたのです。

このように、院長・職員のモラルの低さにも驚くのですが、宇都宮病院が他の病院では敬遠するような、家族に見放された患者、重度の薬物・アルコール依存症の患者なども積極的に受け入れていたことも事実なのです。

そして、このような患者が多少の虐待を受けたところで誰も困らず、事件が表に出ることもなかったのです。また、世間一般も精神病患者や病院の存在を無意識に遠ざけていたのです。

宇都宮病院では虐待のほかにも、亡くなった患者の脳を違法に解剖していました。解剖した脳は研究用として東大医学部へ提供し、東大の医師たちは宇都宮病院の入院患者を研究対象に多くの論文を作成していたのです。

そして、東大の医師たちは非常勤の医師として宇都宮病院に勤務し、病院に勤務する医師数の増加と東大の権威によるブランドイメージの向上に貢献したのです。このようにして、東大医学部との癒着の構造が生まれたのです。また、当時の東大の医師たちは宇都宮病院の悲惨な現状を認識していたようです。

病院外の活動としては、事務長である院長の弟が市議会議員になります。そして、空いた事務長のポストには宇都宮南警察署から人物を招聘するのです。精神病院の閉鎖性とは裏腹に、学会や行政や警察とのコネづくりには労力を注いでいたようです。

そんな訳で、やりたい放題だった宇都宮病院へ向かいました。

宇都宮病院へ行ってみる

宇都宮病院は市内中心部にある大きな病院ですが、目立つ広告・看板はありませんでした。こちらは宇都宮病院へ入る路地に建てられた案内看板です。看板の老朽化が進んでいて、事件当時から建てられていたと思われます。

病院に隣接する寮と生活支援センターです。生活感は感じません。建物の3階以上のフロアのベランダにネットが張られています。

病院に到着します。学校のような外観で、遠くからだと小奇麗な印象を受けます。ただ、院内に入ると廊下は薄暗く、建物側面のむき出しの配管から建物の古さを感じます。

こちらが入り口看板。精神科以外にも診療科目が充実しています。診療時間が12時までで短いのですが、精神病院では珍しくありません。

病院玄関前にある新聞自販機から感じた違和感

病院の正面玄関に新聞の自販機があります。気になる点が一つあります。

自販機の新聞日付の設定に誤りがあるのです。当日は9月6日ですが、自販機の表記は10月5日なのです。間違っている状態に誰かが気付けば、すぐに訂正できそうなささいな事案です。

事件当時、宇都宮病院では患者への虐待だけでなく、作業療法と称して患者に軽作業や職員の手伝い等の労働行為をさせていました。今では自販機の新聞の補充、入れ替えが患者によるものではないと思いますが、業者や職員は気づかないのでしょうか。

最後に、決して長時間居たわけではありませんが、こちらの病院では患者さんと思われる方や家族と思われる方を何名か確認できた事を付け加えておきます。

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