人間の先入観が盲点を作ることがたびたびあるー点と線:松本清張ー

時刻表トリックの誕生

こんにちは。管理人のエスポワールです。今回は松本清張の作品、「点と線」を紹介します。

本作品は「電車の時刻表による現場不在の証明(アリバイ)」が登場するはじめての作品です。通称「時刻表トリック」とも称されます。時刻表トリックに関しては以前に西村京太郎の寝台特急殺人事件を紹介しましたが、寝台特急殺人事件は本作品から20年後の発表になります。

また、時刻表トリックは日本の推理小説独特のものとされています。理由は、外国では時刻表通りに電車が運行しないため、実際の現場での再現可能性が極めて低いからです。ただ、「外国では時刻表通りに電車が運行しない」というのは一昔前までの外国に対する間違った認識です。

私も外国の鉄道に関しては「出発が3時間も遅れたのに目的地には定刻に到着する」というようなことを経験しましたが、そんなことも大昔、90年代のインドでの出来事です。

最近では発展途上国でも長距離電車が時刻表通りに運行することが普通です。

男女の死はそれぞれ独立した点であって、線で繋がっていなかった

それでは作品の内容を紹介していきます。

東京駅の13番線ホームにて機械工具商会を経営している安田と割烹料亭「小雪」の女中2名は、向かいの15番線ホームで産業建設省の佐山と「小雪」の女中のお時が東京から博多まで運行する寝台特急列車「あさかぜ」に乗車するところを目撃する。しかし、その数日後、佐山とお時の二人は福岡県の香椎の海岸で遺体となって発見された。

博多のベテラン刑事、鳥飼は佐山の持ち物から発見された社内食堂の「御一人様」と記載された受け取り票から、佐山は単独で移動していたのではないかという疑念を持ち捜査を開始する。また、佐山は産業建設省の汚職事件の関係者でもあり、この事件を追っていた本庁の刑事である三原は佐山の死に関して調べていく中で博多の鳥飼と出会う。

三原は捜査の結果、13番線ホームから15番線ホームを見渡せるのは1日中でたった4分間しかないことを知り、安田が意図的に佐山とお時が「小雪」の女中2人に目撃させたと推測し、事件の容疑者として安田を追求していく。

しかし、佐山とお時が死んだ時、安田は北海道へ出張に出ており、現地でも安田の姿が確認された為、捜査が行き詰ってしまう。

結局、この事件のトリックを考案し、安田と共に実行犯として暗躍していたのは電車の時刻表フリークである安田の妻、亮子でした。福岡での犯行と、安田の北海道出張を可能にした手段は、当時は庶民が乗ることができなかった飛行機という移動手段でした。

また、佐山とお時はそもそも最初から恋人同士でもなく、安田の経営している会社も関与していた汚職事件の関係者として佐山の死が警察に詮索されないように、遺体の発見された状況が細工されていたのでした。

つまり、佐山とお時は安田夫妻によって別々の場所で殺害されたのです。安田夫妻は2人が寄り添うように死体を並べることによって発見時に情死として処理されるように誤認誘導を図ったのでした。

調査対象者が異性と一緒に歩く時、探偵は「あれが浮気相手か」と勝手に先入観を持つ

以下に本作品中で印象に残った個所を引用します。 三原から鳥飼へ送った手紙の一文です。

人間には先入観が気づかぬうちに働きまして、そんなことはわかりきったことだと素通りすることがあります。これがこわいのです。この慢性になった常識が盲点をつくることがたびたびございます。きまりきった常識でも、捜査の上ではいちおう御破算にして検討すべきだと思います。

確かにその通りだと思います。

探偵の調査の現場でも同じことが言えます。代表的な状況が調査対象者の浮気相手の特定の場面です。本当は単なる友人だったり会社の同僚であっても、探偵の目からはどうしても浮気相手に見えてしまうのです。これは先入観を通り越して職業病のようなものです。それにより調査が失敗したり、調査の進捗の足かせになることがまれにあります。

最後に1枚写真を紹介します。私の使っていた時刻表です。現在ではスマホのアプリを使用しているので時刻表をめくることはありません。ただ、2017年1月号までは時刻表を使いこなしていたので、アナログからデジタルに完全に切り替えた時期は割と最近です。

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