浮気調査の依頼人が調査当日に探偵に協力していただきたいことー赤毛連合:コナン・ドイルー

「シャーロキアン」へのいざない

こんにちは。管理人のエスポワールです。今回はコナン・ドイルの作品から「赤毛連合」を紹介します。

本作品は短編集「シャーロックホームズの冒険」に収録されている作品です。コナン・ドイルは60作品のシャーロックホームズシリーズを発表していますが、56作品は短編です。つまり、シリーズのうちのほとんどは短編ということになります。ですから、私はまだ実行していませんがシリーズ全作品読破は割とハードルは高くありません。また、シャーロックホームズの熱狂的なファンを通称「シャーロキアン」と呼びます。シリーズ全作品を読破すればシャーロキアンの入り口に立ったと言ってもよいと思います。

ただ、いくら短編小説だからと言っても「時間の合間にサクッと読める」のようなノリは行き過ぎです。作品のボリュームが短くても推理小説くらいはじっくりと腰を据えて読んだほうが良いと思います。例えば、私の場合は登場人物を整理する為にメモ帳を側に置いています。推理小説では登場する場面が極めて少なくても、それが作品全体において重要な場面であることが多いからです。そして、分からない単語が出てきた場合にすぐに調べられるようにパソコンの前に座って読書しています。もちろん、地名が出てきた場合はすぐに地図で場所を確認します。

ただ、読中に本気で謎解きや犯人捜しをすべきかどうかに関しては作者や作品によって異なります。私は読者が謎解きや犯人捜しができる作品の方が好きですが、シャーロックホームズシリーズに関しては謎解きや犯人捜しは必要ありません。

犯罪組織が計画した銀行へ潜入するための遠大な構想

それでは作品を紹介していきます。

ある日、ワトソンが友人のホームズを訪ねると、そこには燃えるような赤い髪の毛を持つ年輩の男、ウィルスンがいた。

ウィルスンは質屋の店主で、最近雇った従業員のスポールディングから奇妙な団体、「赤毛連合」の新聞広告を紹介された。新聞広告によれば「赤毛連合」では赤い髪の毛で健康な成人男性であればだれでも応募が可能で、組合員になれば簡単な仕事をするだけで破格の報酬がもらえるということだった。応募を決意したウィルスンは赤毛連合の事務所を訪ねると、そこにはウィルスン以外にも多くの入会希望者が殺到していたが、審査によって皆不合格とされていた。しかし、審査を行っていたダンカン・ロスはウィルスンを採用し、ウィルスンは組合員となることができた。

組合員となったウィルスンは「事務所の外には絶対に出ないで毎日10時から14時まで大英百科事典を模写する」という一見すると赤毛である必要がなく生産性も低そうな仕事を週給4ポンドの報酬で契約することになった。しかし、問題なく給料を受け取りながらも8週間が経過した頃、ウィルスンが事務所に出勤すると「赤毛連合は解散した」という貼紙があった。

驚いたウィルスンはダンカン・ロスを探そうとするが、事務所の家主によれば、名義はロスではなく、他の男だった。また、家主は名義人の男の素性や「赤毛連合」の存在も知らなかった。従業員のスポールディングに相談しても、「そのうち連絡がくるのではないか」という無関心な対応だった。そこで、納得がいかないウィルスンは「赤毛連合」とダンカン・ロスの正体、組合員に課せられた労働とその破格の報酬の謎についてホームズに相談していたのであった。

結局、ウィルスンの「赤毛連合」への加入はスポールディング、ダンカン・ロスらが仕組んだものだった。ウィルスンが「赤毛連合」の組合員になることで質屋を留守にさせるのが彼らの目的だった。そして、ウィルスンが店を留守にする間にスポールディングは地下に穴を掘り、質屋の裏の大通りにある銀行へ潜入して地下室の現金を盗もうとしていたのだった。トンネルが完成し、ウィルスンが質屋を留守にさせる必要がなくなると「赤毛連合」という架空の団体は不要となった。

「赤毛連合」が解散した週の土曜日の夜、ホームズらは銀行で彼らを待ち伏せし、スポールディングらを無事捕らえることができたのであった。

探偵を悩ませる、どこにでもいそうな平凡な顔

以下に作品中に印象に残った箇所を引用します。 事件の真相が全く分からないと困惑したワトソンに対してホームズが言ったセリフです。

ほんとうに不可解な謎は、ありふれた、なんの特徴もない事件のなかにこそあるんだよーちょうど、平凡な顔立ちほど見分けがつけにくいようにね。とはいえ、この一件は、さっそくにも解明に乗り出したほうがよさそうだ

このようにホームズは一般的には個性や特徴が際立つほど謎の解明は容易で、特徴がない事件ほど謎の解明には困難であると言っています。そして、これはどこにでもいそうな平凡な顔ほど見分けがつきにくいことと同じだとも言っています。

探偵の立場からすると、確かに平凡な顔立ちをした調査対象者の判別は難易度の高い仕事です。特に最近ではマスクをしている人も多く、その判別をさらに難しくさせています。ただ、いくら探偵でも短時間で顔立ちの判別能力を上げることは不可能なので、調査対象者の服装や持ち物の特徴を頭に入れることに労力を使います。つまり、人の判別の際に「顔の特徴」のウエイトを限りなく低くすることがポイントになります。そういった意味では服装に個性が出る女性よりも男性の方が判別の難易度が高くなります。

ですから、調査当日の尾行対象者の服装は依頼者に是非とも提供いただきたい情報です。具体的な作業は玄関から出る直前にメールを送信するだけです。現在の調査現場では依頼者がメールで送信した情報はほとんど遅延なく現場の探偵に伝えられます。

つまり、このような情報提供ができる状況なのにやらない依頼者は調査に非協力的だなと思います。同様に、依頼者の調査当日の情報提供が現場の探偵に伝わらないような探偵事務所に調査を依頼した場合、探偵事務所選びに失敗したということになります。

依頼者の当日の情報提供が現場の探偵に伝わらない理由は、調査を他社に委託しており、委託者と受託者の間でメールの転送がスムーズにいかない為です。スムーズにいかない理由は調査を委託した側が調査当日に依頼者からのメールの着信にすぐに気づかないことがある為、或いは、メールの着信に気づいても内容をコピペして転送先のアドレスを入力する間に時間切れになる為です。

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