2019年、サンマが変わった

多くの人は無関心だけれど、サンマの水揚げが減ってきている

こんにちは。管理人のエスポワール です。今回はサンマに関してまとめたいと思います。

サンマは以前、水産物の営業職として働いていた頃に取り扱った経験があり、私にとって思い入れのある食材です。サンマ漁は近年では10トン前後の水揚げ量で最盛期の半分以下となっています。異常気象や海水の温度上昇や乱獲による生態系の変化が原因とされていますが、正確には分かっていません。

そんなサンマですが、どこにでもあるような目利きや料理の話をしてもつまらないので、サンマで商売した人間だけが分かるような話や、2018年までのサンマ漁の話と2019年以降のサンマ漁との変更点に関してまとめたいと思います。

サンマの旬は盆明けから10月中旬

まず、サンマに限らず魚には旬の時期があります。魚が出始めたころを「はしり」入荷が多くなるころを「さかり」ピークが過ぎたころを「なごり」といいます。

一般的には「さかり」の時期を旬という認識です。入荷が少なくても味が良いとされる時期を旬と言う場合もありますが、水産物の流通の現場では入荷量を基準に旬という言葉を使っています。また、言葉としては存在していても「はしり」「さかり」と比較して「なごり」はほとんど使いません。

そんなサンマですが、盆明け-10月中旬が旬の時期となり、まさに「秋の味覚」の代表でした。ただ、ここでは7月から盆までの「はしり」と10月中旬から12月の「なごり」も紹介します。

2018年までのサンマ漁-はしり編-

それでは、「はしり」から解説します。まず、生サンマの漁が解禁となるのが例年7月上旬です。「生サンマ初入荷」の報道が出てくるのもこの時期です。その際、シーズンの入荷量の見通しなどが報道されるのですが、「入荷量などは分からなくて当然」「当たる可能性の低い予想は無意味」のような感覚で現場では仕事をしています。

また、一般的には知られていないのですが、「はしり」の時期でも7月末の頃までと8月初旬からお盆の頃までで、サンマの漁法は異なります。

7月末までのサンマ漁は「刺し網漁」といって網に刺さったサンマを網から抜いて選別、出荷しています。産地は釧路・根室などの道東です。刺し網漁に関しては魚体に傷がつきやすく、サンマが網に刺さってから捕獲するまで時間がかかってしまい、鮮度がよくありません。しかし、初物と言うことで話題になりやすく、市場でも入荷当初はそれなりの値段が付きます。一般的な小売店などでは高くても400円くらいで売られることが多く、都内のデパ地下などでは1000円前後で売られることもあります。

8月初旬からお盆までの期間は「小型船棒受け漁」です。棒受け漁とは魚の群れを棒で固定した網へライトで誘導し、引き揚げるというものです。こちらも産地は道東です。この時期から魚の鮮度はよくなるのですが、漁獲量が少なくて高値が続きます。

2018年までのサンマ漁-さかり編-

つづいて「さかり」の時期、旬の時期を解説します。時期はお盆明けから10月中旬です。漁法は「大型船棒受け漁」です。「サンマの入荷が最盛期」のようにニュースでも報道されるのもこの頃です。

小型船と大型船の使い分けは資源保護の観点から使い分けていると聞いたことがありますが、資源保護に関してはどの程度影響を与えているのかは正直には良く分かっていません。

この時期のサンマは非常に鮮度がよく、魚体も大きくて漁獲量も最盛期を迎えます。産地は道東、および三陸です。三陸の水揚げは道東と比較して1日早く首都圏に届きます。

また、この時期になると出荷地のほうでも大量に出荷して値崩れしないように、出荷調整をしています。つまり、出荷しない分は冷凍庫に保管し、これらが冷凍サンマとなります。

2018年までのサンマ漁-なごり編-

最後に「なごり」の時期を解説します。11月中旬にもなるとサンマの存在感が薄くなっていきます。産地は伊豆半島のほうまで南下するのですが、生ではなく干物のような加工用として水揚げされます。

三陸・あるいは房総半島のサンマも水揚げ量は減少します。最も遅い時期でクリスマスまで生サンマを納品したことがありますが、年が明けてサンマを納品した記憶はありません。

2018年までのサンマ漁スケジュールのまとめ

以上が2018年までのサンマの水揚げスケジュールです。つまり、サンマ漁のポイントは、「水産資源としてのサンマを保護しつつ、回遊ルートや成長に応じて漁期や漁法を変えている」ということなのです。当然、年によっても水揚げ量や時期がバラつきがある事も捕捉しておきます。

2019年サンマ漁-漁期の制限廃止-

次に2019年のサンマ漁を解説します。2019年は5月下旬から「公海上での大型船棒受け漁」が解禁されています。つまり、以前までの出漁する漁船の制約や漁期の制約がなくなったのです。

理由は、「サンマの水揚げが減っており、早期に出漁したい漁業関係者の意向を取り入れたため」です。日本近海まで回遊してくるサンマを日本の領海内に来る前に水揚げしようというのが今回の解禁のねらいです。また、サンマの水揚げが減った理由も、「公海上でのサンマの水揚げが増えた為、日本の漁業水域でのサンマの回遊量が減ってしまったから」とも推測されているからです。

このことにより、公海上で成長する前のサンマを日本中国台湾などの漁船が水揚げしているというのが今年の初サンマの現状です。

公海上で水揚げされたサンマに対する厳しい評価

2019年8月都内小売店で撮影

しかし、水揚げされたサンマの評価は高くありませんでした。サイズも小さく、水揚げから市場に並ぶまでの時間が長くなってしまい、鮮度が失われてしまったのです。また、成長前のサンマを水揚げしても乱獲に拍車がかかるだけで、日本近海まで回遊してくるサンマが減ったという問題の本質的な解決にはなっていないのです。

尚、公海上で外国籍の船がサンマを漁獲するだけならば、特に国際法上問題がある訳でもなく、漁獲総量を決める取り決めなどもなかなか足並みが揃いません。また、肝心の消費者もサンマを以前よりも食べなくなってきているので、実はあまり困っている人や関心を持つ人もいないのです。サンマに限らないのですが、「水揚げの減少よりも消費者の購買意欲の減少のペースが上回ったいるので、漁師さんと流通関係者だけが困っている」というのが現状なのです。

そんな中、今年のサンマ漁の漁期の制限廃止は現状の課題に対して、「資源保護や魚の旬を無視しても売り上げや水揚げ量が増えれば良い」という方向に舵を切ったということになります。来年以降、継続的にサンマを取り巻く環境が改善する見込みはありません。

2019年はサンマ漁の終わりの始まりの年になるかもしれません。

2018年9月都内小売店で撮影

また、上の写真は昨年の小売店で販売されていたサンマの写真です。写真下部の発泡スチロールの箱の側面に「27」と書かれています。この数字は「1箱に27匹のサンマが入っている」の意味です。数字が小さければサンマのサイズが大きいということになります。

小売店でサンマを買う際に参考にしてください。

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